悪夢

「私は子供たちを救いたい・・しかし、どうすればいいんだ。」こんなショッキングな言葉で締めくくられたこの映画。友人がブログにレビューを書いていて、気になったので見に行って来ました。

タンザニアヴィクトリア湖に数十年前に何者かによって、ナイルパーチという魚が放たれた。この大型肉食魚は、湖の生態系を破壊つつも周辺の村に「経済」を与えた。この魚を輸出することによって、仕事が生まれ、一部の人々は豊かになった。

その一方で生まれる、貧困や虐待、ドラッグの問題。搾取される労働者たち。「何もしないよりはマシ。働けることはありがたい。」と日本人には到底考えられない労働環境の中で彼らは淡々と語る。

この映画はそんなタンザニアの人々、ストリートチルドレンや売春婦、猟師、工場長、ジャーナリスト、政治家、輸出先のEUの政治家、それぞれの立場の者が、それぞれの意見を吐き出していく。

見ている私たちは、何も言葉に出せず、これが現実であり、なにをどうすればいいのか分からないままこの映画を見終わることになる。

ここに出てくるナイルパーチという魚は日本でも食用されている。実際に映画の中でも、主な輸出先はEUに「日本」と出てくる。日本では白身魚として代用されているようだ。つまり自分も、この映画の一部分を担っているということになる。

先進国が途上国の豊富で廉価な労働力を利用し、衣服から食料まで様々なものを輸入する。中国の衣料品が、東南アジアの農作物や、アフリカの魚類や香辛料が手に入らなかったらとしたら、とてもじゃないが生活は苦しくなるだろう。

搾取することで生まれる貧困。搾取されることを厭わず働く労働者。悪環境がもたらす様々な弊害。もし、我々が外国からの輸入をやめれば、労働口が奪われてますます貧しくなってしまうのも現実である。
「我々は、巨大な組織の一つの部分だ。」そんなメッセージを発していた映画の中のカレンダーが、とても印象的であった。もうこの悪夢、ではなく現実から抜け出すことはできないのであろうか。